橋排尿中枢より上位の障害で排尿筋-尿道括約筋協調不全は起きるか?

蓄排尿に関わる神経核は高位から、大脳橋排尿中枢(PMC: pontine micturition center)、胸腰髄核(副交感神経)、仙髄Onuf核(交感神経)の4つで構成。

蓄尿時は、大脳ー(抑制)→PMC---仙髄Onuf核からの陰部神経→内尿道括約筋収縮

排尿時は、大脳---PMCー(興奮)→胸腰髄核からの骨盤神経→膀胱平滑筋収縮

排尿筋-尿道括約筋協調不全(DSD)というのは、脊髄損傷における排尿障害の診療ガイドライン(2012年版)CQ6によると、

仙髄より上位の脊髄障害による神経因性膀胱において,(排尿筋過活動による)排尿筋収縮と同時に尿道括約筋の不随意収縮が生じる状態を指す。

と定義される。つまり、PMCと仙髄Onuf核との間のどこかが損傷して自律神経のバランスがうまく取れなくなり、内尿道括約筋も膀胱平滑筋も同時に収縮しちゃって、排尿したいんだか蓄尿したいんだかどっちつかずな状態ということですかね。

そもそも疑問に思っていたのは、PMCより上位が損傷した場合だったのだけど、それって常排尿時と同じと考えられるわけで、DSDも起こり得ないし、排尿しっぱなしなので残尿も無いことになる。

で、新たにDSDの時の残尿具合が気になった訳だけども、

脊髄病変では過活動膀胱(尿意切迫,頻尿,時に尿失禁をともなう)と残尿の両者が同時にみられることが多い.

(中略)

脳疾患では残尿が通常みられず,過活動膀胱が典型的にみられる.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/53/3/53_181/_pdf

ということなので、お後よろしく以下に集約いたしました。

PMCより上位損傷: DSDなし、過活動膀胱にて残尿なし

PMCと仙髄Onuf核間損傷: DSDあり、過活動膀胱と残尿どちらもあり