17α-水酸化酵素欠損症でアルドステロンは上昇するか?

難病情報センターの代謝マップを拝借いたしますと、

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17α-水酸化酵素(P450-17α)を欠損していると、ステロイドホルモン合成の流れが図の右方へ行かなくなるので、図の下方へ流れてアルドステロン合成過剰となり、カリウム性高血圧になる。

と単純に思っていたのだが、これ間違い。その中間代謝物であるDOCやコルチコステロンにも弱いながらアルドステロン作用があるために、アルドステロンへ行き着く前に低カリウム高血圧状態になり、むしろアルドステロンは合成に抑制がかかって低値になるのだそうな。

てことは、代謝マップから察するにアルドステロン合成の律速酵素はP450-aldoなんですよね、と調べてみたところ、昔懐かしEndocrinologyのMini Reviewに最近の知見がまとめてあった。

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今はP450-aldoよりCYP11B2と呼ぶみたい。

律速機序としては、副腎皮質の球状層細胞膜のカリウムチャネルが常に外からカリウムを取り入れて、細胞膜を静止電位に保ってるけど、細胞外カリウムが高濃度になったり、あるいは低血圧からのレニン-アンジオテンシン系調節が入ると、細胞が脱分極してCYP11B2の発現が誘導されてアルドステロン合成が増えるということらしい(遺伝子レベルの発現誘導には数時間以上かかり、アルドステロン合成調節は数十分単位だと思うが、ここでそのdiscrepancyについて深追いはやめとく)。

従って逆説的に、カリウム高血圧状態がDOCやコルチコステロンによって先に作られちゃってると、抑制かかってCYP11B2は発現誘導されないってことか。

ちなみに、DOCやコルチコステロンを合成するCYP11B1(P450-11β)は、球状層だけでなく束状層や網状層の細胞も持っているこちらの報告にあり、だからこそP450-17α欠損ではアルドステロンではなく、DOCやコルチコステロンによって低カリウム性高血圧になるんだな。球状層以外の細胞でもワサワサ作っちゃうんだから。

余談になるが、CYP11B2が次世代降圧薬のターゲットとして今年の日本高血圧学会で発表があったらしく、トピックとして面白かったんで載せておく。Medical Tribuneより(原著が見つからん)。