偽性アルドステロン症の機序は?

我らがバイブル、year note 2016 D-74より

腎型11β-HSD2の阻害によりコルチゾールからコルチゾンへの不活化が阻害される.このためミネラルコルチコイド受容体に結合するコルチゾールが増加,原発性アルドステロン症と同様の徴候を示す.

と、しっかり記載されている。

11β-HSD(P45011β)には1と2があって、11β-HSD1はコルチゾールを合成(以前のエントリに代謝マップあり)、11β-HSD2は不活性化する。甘草が阻害するのは11β-HSD2の方で、コルチゾールが不活性化されないからいっぱい溜まり、アルドステロン作用を示す。

のだが、この機序がなかなか脳に定着しないので、深めるためにこの資料

甘草は,主要成分としてトリテルペンサポニンであるグリチルリチン酸(GL)を含んでいる. GLには抗炎症作用があり,肝機能改善薬として内服剤だけでなく注射剤としても使用されている.GLは,そのアグリコン部であるグリチルレチン酸(GA)1分子に対して,3位の水酸基に2分子のグルクロン酸 が結合した構造を持つ配糖体である.漢方薬を構成する生薬として甘草を経口投与した場合, GLはその糖部の水溶性の高さのために消化管上皮を透過しにくく,大腸に生息する腸内細菌によって糖部が加水分解されたGAとして吸収されることから, 薬理活性本体はGAであるとされている.

グリチルリチン酸(GL)が直接働くわけでなく、腸内細菌代謝を受けたグリチルレチン酸(GA)が作用するのね、新発見。

さらに、なぜ甘草摂取による偽性アルドステロン症の発症に個人差があるのかというと、

1995年に加藤らは,甘草含有漢方処方や強力ミノファーゲンシーなどのGL製剤を使用した患者において,偽アルドステロン症を発症した患者と発症しなかった患者の血漿に含まれる甘草由来の代謝物の濃度を比較した.その結果,偽アルドステロン症を発症しなかった患者では検出することのできなかった3-モノグルクロニルグリチルレチン酸(3MGA)を,発症した患者の血漿においてのみ検出したことを報告した.このことから,血液中に3MGAを代謝物として出現させるという個人の体質が,偽アルドステロン症の発症と関連していることが推測されている.

とあり、GAがさらに肝代謝を受けた3MGAが11β-HSD2の主要阻害物質と考えられてるとのこと、これまた新発見。

おまけで

甘草に副腎皮質ホルモン様作用があることは古くから知られており,かつてはGLやGAが鉱質コルチコイド受容体に結合することによって偽アルドステロン症を起こすと考えられていた.

らしく、だからついついそんな気がしちゃうのかーとちょっと胸を撫で下ろしつつ、情報up to dateの重要さを改めて噛みしめるのであった。