第24章 麻酔のリスク

  • p705: 麻酔に伴う死亡率は1987年の周術期死亡に関する秘密調査Confidential Enquiry into Perioperative Deaths (CEPOD)では1/185,000症例であるが,約30年前のBeecherとToddの報告では1/2,680症例
麻酔に関連した死亡
  • p707: 死亡率はASAの身体状態Physial Status Classificationスコアとよく相関
  • p708: 術後の呼吸抑制が,麻酔のみに起因する死亡や昏睡の最大の原因
  • p709: 410例の周術期死亡のうち,9例は誤嚥または嘔吐,18例は心停止,高齢女性の大部分は大腿骨頸部骨折
  • p710-711: 小児では成人の3倍の心停止の危険性,1例を除く全症例で心停止に先行して徐脈が進行
  • p711: 麻酔に起因する心停止の原因としては,換気不十分(27人),スキサメトニウム後の心静止(23人),導入後の低血圧(14人)
  • p712: アテノロールが周術期のプラークの安定性を高め,結果的に長期生存率を改善
  • p712: バイスペクトルインデックスbispectral index (BIS)モニターで評価した麻酔深度が深いほど,術後1年での死亡率が高い
患者に関連したリスク
  • p712: 死亡率を悪化させる有意な危険因子に,麻薬を用いた麻酔法,1-2種類の麻酔薬のみが投与された場合
  • p714: 客観的なGoldman Cardiac Indexが主観的なASA身体状態分類よりも高い価値を追っているとはいえなかった.
特殊な患者群
  • p716: [産科]全身麻酔の場合,死亡の73%は気道の問題
  • p717: [小児]年齢の低い乳児ほどリスクが高い.多くの死亡が麻酔リスクの低い症例
  • p718: [高齢者]リスクは年齢と相関するのではなく合併している疾病に相関
麻酔薬に直接関連するリスク
  • p718: ハロタンに関する問題は劇症肝壊死と死亡.セボフルランに関する問題は,代謝産物であるコンパウンドAの腎毒性の有無
  • p719: 全身麻酔よりも区域麻酔のほうが予後がよい
手術に関連するリスク
  • p719: 鼠径部以下の血管手術も同様の心合併症発生率を有している
麻酔実施者に関連するリスク
  • p720: 術者の技術や経験が危険性に影響する可能性
  • p720: 90の麻酔に関連した死亡のうち約半数は手術室で発生しており,19は導入中に発生
  • p720-721: 最も死亡率が高かったの(1/11,432手技)のは歯科医から麻酔を受けた患者
  • p721: 死亡(1.13, 95%信頼区間: 1.00-1.26, p<0.04)ならびに蘇生失敗(1.13, 95%信頼区間: 1.01-1.27, p<0.04)の相対危険率は,資格を有しない中程度の経験を有する麻酔科医が麻酔を行った場合に高かった.
麻酔科医のリスク
  • p721: 臨床症状を有するラテックスアレルギーの頻度は2.4%,臨床症状はないがラテックスに感作されている頻度は10.1%であった.接触皮膚炎は24%
  • p721: 以前のリスクは主に肝炎だったが,今日ではヒト免疫不全ウイルスhuman immunodeficiency virus (HIV)が最大の懸念事項
  • p721: HIVに感染するリスクは,血液や体液の経皮的曝露1回あたり約0.4%
  • p721: 二重手袋がリスクを減らす可能性