自律神経過緊張反射とは?

脊髄損傷における排尿障害の診療ガイドライン(2012年版)CQ40によると、

自律神経過緊張反射(autonomic hyperreflexia,autonomic dysreflexia)は,主としてT5~6レベルより高位の脊髄損傷患者にみられる自律神経の異常反射で,麻痺部に生じるさまざまな刺激が引き金となって発生する。

原因として麻痺部の疼痛刺激や管腔臓器の膨満に起因するものが多く,特に尿閉カテーテルの閉塞,内視鏡・膀胱内圧測定・膀胱造影などによる膀胱充満が最も多い。膀胱充満の刺激は膀胱からS2~4を経由して脊髄を上行して脳に至るが,この刺激はT5~L2のレベルから出る交感神経枝を介して麻痺部の血管を収縮させる。血管の収縮により血圧が上昇すると,頸動脈洞や大動脈弓の圧受容器が反応して心拍数の減少,動脈の拡張により血圧上昇を抑制するが,脊髄損傷では脊髄の損傷レベル以下に抑制の命令が伝わらず,麻痺部の血管拡張がみられない。このため,血圧上昇を抑制できず,一方で非麻痺部には血管の拡張による症状が出現する。また,迷走神経を介して徐脈発作もみられる。

平たく言ってみる。

膀胱充満刺激が感覚神経を介して上行性に脳に伝わると、交感神経が興奮して血管が収縮し、一旦血圧が上がる。正常であれば圧受容器のフィードバックにより血管が拡張し、血圧の上昇は抑制される。ところが脊髄損傷があると、損傷レベル以下に抑制が伝わらないため、血管が拡張せず血圧は上昇する。

うーん、意味分からん

高位がT5〜6レベルより上位の損傷でみられるってのは、血圧上昇に与する交感神経がT5〜L2から出るからとしても、疑問がふつふつ。

脊髄損傷があるならば、なぜ膀胱充満刺激が上行できるのか?

抑制命令が下行性に伝わらないのに、なぜ交感神経による血管収縮は伝わるのか?

そんな迷える子羊に30年以上も前の論文が解を授けてくださった。

すなわち第4胸髄から第2腰髄にわたる範囲より起始する交感神経は延髄を中心とする上位神経中枢により抑制的コントロールを受けている.上位脊髄損傷では,この中枢よりの支配が断絶されるため,膀胱などからの刺激は何の抑制も受けぬままに交感神経へ流れて行き,反射弓を形成する.その結果,脊髄損傷レベルより下の支配域において血管の収縮をおこし,これが発作性高血圧となって出現する。血圧上昇の結果,大動脈弓および頚動脈洞の圧受容体を介して頭頸部の血管拡張および迷走神経反射が惹起される.その結果,頭痛,徐脈,鼻粘膜うっ血による鼻閉となり,さらに血管拡張→体温上昇により発汗をひきおこす.

胸腰髄レベルの交感神経は正常であれば上位から抑制されているけど、その間で脊髄が損傷してしまうと抑制が外れた易刺激状態で、だからこそ膀胱が充満したくらいの刺激で過剰に反射してしまい、血圧が上昇、上位からの抑制も届かない

おまけに損傷高位より上では懸命に血圧を下げようと血管拡張するために様々な合併症が生じるとな。

ああ、フリスク10粒一気に食べたくらいの爽快感です。

ちなみに、自律神経過緊張反射は可及的速やかに対処が必要な緊急事案だそうな。T6レベル以上の脊髄損傷をみたら気をつけなければなりませんてことで、いつか読むかも役立ちそうな資料